ビームで連載中の「銭」がかなり好きなのだが、この「銭」が描く業界話って、ベタにいえば楽屋裏の話であって、単純にいえばメタ視線を表現している。僕らの知っている業界とやらが実のところこんな風に動いている「かもしれない」という僕らの想像や妄想にできるだけ合致した話の書き方をしているので、よくいえば、とても親切な作品*1、悪くいえば、とてもご都合主義な作品*2。でも、その一方で、この作品には「幽霊」が語りの構造の中に紛れ込んできていて、その説話論的な役割はとても興味深いものとなっている。いわば「かもしれない」部分をベタにフィクションとして加工すれば、業界通やフィクサーを話の構図の中に叩き込んでフィクションの中に無駄なリアリティを付加したり、信憑性を加えるのではなく、「幽霊」を構図に紛れ込ませることで、周到に「この話はフィクションである」ことを宣言するわけだ。その意味で「銭」はとてもよくできた僕らのメタへの意思、より雑駁な言葉でいえば「噂話好き」な嗜好を表現した作品ともいえる。

*1:僕らの欲望を裏打ちしてくれるので

*2:紋切り型な展開を羅列するだけだから