第5回目は、機本伸司「神様のパズル」です。

第3回小松左京賞受賞作のこの作品をラノベ分類するのはどーなのよという意見もあるかと思いますが、kase的にはこの作品もラノベです。まずジャンルに対する意識としてSF(宇宙の作り方の考察、そしてのその実行!)と学園物(物理学の天才美少女に振り回されるさえない大学生の生活)への参照が見られます。宇宙の作り方にまつわる難解な概念や理論をより平易な形で読者へと届けるために、大学のゼミにおけるディベートの風景や、天才物理学者である少女と物理学をちっとも理解していない大学生との問答めいたとんちんかんな対話などが仕掛けとして用いられています。この時点で、(1)読みやすさを高める仕掛け(2)ジャンル横断的な作品の属性(3)萌えるキャラクターの配置、とラノベの定義をすべて満たした作品であることがわかります。

作品内容については、宇宙の作り方をめぐるハードSFといって問題ないと思われます。その意味では、イーガンの「万物理論」を個人的には思い出しました*1。本作品の特徴は、そのハードさを読みやすさへと変換するための作品構成の鮮やかさに尽きると思われます。オチは微妙。

天才美少女、穂瑞沙羅華の素っ気無さぶりに超萌えました。

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

*1:イーガンよりもトンデモ率は低めで、常識的な作り方ですが。。