「千鶴と夏美といいんちょさん」のSS[てらしい][ネギま!]

寒い、寒過ぎる。


あまりの寒さにこたつを使用しているてらしです、8月なのにな。


まだ残暑厳しい8月であることを思い出そうと、665室SSを書いてみた。


ほんとは三人の会話だけにしようと思ったのだが、気が向いたので補足/蛇足を付けて。


タイトル:「この夏、世界で一番寒い部屋」




 麻帆良学園女子中等部の寮の一室。665室。
 夏休みも押し迫った頃。暦の上では秋と言えども、まだまだ残暑が厳しい時期である。


「あっついな〜〜…」


「あっついですわね〜〜…」


「あらあら二人とも、そんなに暑いかしら?」


 この夏、千鶴の提案により665室はクーラーの仕様が禁止されている。なぜ千鶴が突然こんな馬鹿げた提案をしたのかは不明であるが、とにかくこの部屋では千鶴が絶対的な権力者であるからして、そのことを拒否することが夏美、あやかにできたであろうか。
 とはいったものの、さすがに残暑の厳しい中、夏美もあやかもクーラー無しの生活にはいささか限界のようである。


「ねえ、ねえ。ちづ姉なんでクーラー入れちゃだめなの?」


「そうですわ、千鶴さん!村上さんのおっしゃる通りです!」


「だってぇ、ほら最近話題の地球温暖化ってあるじゃない?地球にやさしい暮らしのためには、多少の暑さくらいがまんしてもいいんじゃないかと思うの。」


 千鶴の言うことはもっともかもしれない。しかし、夏美とあやかは食い下がる。


「でもさぁ、こんなに暑いと、地球の前に私たちが死んじゃうよ〜!」


「それに千鶴さん!せっかくのクーラーを使わないなんて、人類がクーラーを発明した意義に対する冒涜的行為ですわ!」


 千鶴は二人の言葉にたじろく。その意見も至極真っ当ごもっともである。


「でもほらっ、電気代とかも掛かるし、ねっ!」


 千鶴はなにやら少し押され気味なようだ。彼女も暑さによって頭が回らないのだろうか。いつもの「のらりくらり」とした言い回しにキレがない。


ちづ姉…、学園の寮だから電気代気にすることないでしょ…。」


「それに、多少電気代がかかったとしても私のポケットマネーで払って差し上げますから!今すぐクーラーを付けさせて下さい!」


「でっ、でもぉ……」


 バサッ!


 何かの落ちる音がする。


「?ちづ姉、何か落ちたよ?」


「そっ、それは…」


 あやかがその落ちた物を手に取る。


「あら、ファッション雑誌ですね。特集は『夏のお肌ケアはこれで完璧!』ですか。なになに?『クーラーは夏のお肌の天敵!冷房を止めてお肌の乾燥を防ぐことで、目尻の小じわを予防します!』…ってこれって!?」


「ちっ、ちづ姉…。まさか小じわを気にしてクーラー使わないようにしてたんじゃ…」


 どうやら図星らしい。千鶴は二人から顔を背ける。
 しかし、次の瞬間、まるで休火山が突発的に活動を開始したかのような「ゴゴゴゴ…」という地響きに似た鈍い効果音とともに、阿修羅の顔に菩薩の面を被せた顔つきで二人の方を向く。


「おほほ…。いいこと、あやか、夏美。このことを誰かに言ったら…、どうなるかわかってるでしょうね……!!」


 その勢いと恐ろしさにおののく二人。声を揃えて必死で謝る。そうでもしなければ、命を取られそうな勢いである。


「スっ、スビバセンデシター!(半泣き)」


「スっ、スビバセンデシターー!(号泣)」


「おほほ、わかればいいのよ…、わかれば……!」


 …千鶴の怖さに背筋が凍り付く。
 もう暫くクーラーは必要になりそうにないようである。